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コラム

認知症となった親の財産の管理処分~成年後見

2021年6月17日生前対策
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認知症の親の医療費・介護費用の支払いが大変。空き家となっている実家を処分したい。亡父の遺産相続を進めたいが母が認知症で進まない。こんなときに利用するのが成年後見制度(法定後見制度)です。

1 介護保険制度と対をなす成年後見制度

人生100年時代を迎え、老後の生活が長期になることに伴い、避けられないのが、長期間にわたる頭と体の衰え。

体の衰えに対しては、主に介護保険制度による介護サービスを受けることができます。

頭の衰えに対しては、主に家族信託、任意後見、成年後見という制度で、親の財産管理をします。

家族信託と任意後見は、事前の対策メニューです。

成年後見は、認知症になってしまってから事後的に対策するメニューです。

今回は、「認知症となった親の財産の管理処分」ということで、成年後見について解説します。

2 認知症になった親の財産管理は厳しいという現実

親が認知症となると、家族信託や任意後見などの事前対策をしていないと、親の財産管理を行うには、成年後見制度の利用が必須となります。

「そんなことないよ。親の介護費用は、ATMで振り込めるし、なんとかなるよ。」

たしかに、ATMで扱える金額であれば、振り込みは事実上可能です。

しかし、金融機関の窓口で本人確認を求められれば、本人以外の振込みは原則的に認められません。

振り込み手続きは、債務の弁済という法律行為のため、本人以外の方が手続しても無効になるからです。

また、認知症になった親の通帳を、成年後見を利用せずに出し入れしていると、将来の相続もめの原因となり、苦労して親の面倒をしてきたのに、報われない、後味の悪い結果となるのです。

認知症の親の財産管理で問題となるのは、大きく分けて、次の3つです。

①預貯金の管理
②施設入所等により空き家となった実家の管理処分
③母が認知症の場合における亡父の遺産相続

①預貯金の管理

預貯金の管理とは、収入と支出の管理です。

高齢の親の収入といえば年金です。
地主・大家さんであれば地代・家賃などもあるかもしれません。
金融資産への投資をされている場合は、配当収入などもあるかもしれません。
いずれの収入も認知症の親の口座に入金されます。

一方で支出は、医療費、介護費用、施設入所費、固定資産税、食費、日用品等といったところでしょうか。

このうち問題となりやすいのが、月々の収支と、施設入所に際しまとまったお金が必要になる場面です。

月々の収支については、親の年金口座と医療費・介護費の口座が同じで、収支がプラスであれば、問題になることは少ないでしょう。

逆に、収支がマイナスであれば、子の財布からマイナス分を埋め合わせることになり、問題が生じることとなります。

施設入所に際してまとまったお金が必要になる場合には、金融機関の窓口で本人確認を求められ、事情を説明すると振り込みに応じてもらえず、成年後見を勧められることになるでしょう。

②空き家となった実家の管理処分

「親が認知所になり空き家となった実家を売却したい。」

土地や建物といった不動産の売却には、所有者である親の契約能力が必要です。

程度にもよりますが、認知症の親名義の不動産を売却するには、成年後見人をつける必要があります。

注意すべきは、成年後見人をつけたからといって、売却できるとは限りません。
成年後見人が客観的にみて、親にとって必要と判断した場合にのみ、売却が可能となります。

③相続手続き

親が認知症になると、相続手続で必要となる遺産分割協議書にサインすることができません。

もっとも、相続手続に関わる司法書士等の専門職は、遺産の名義人となる相続人に対してのみ本人確認義務があり、遺産分割協議の合意の実質的成否まで関知しません。

したがって、この点については相続人の仲が円満である限り、チェックすべき人間がおらず、結果的に素通りというケースも少なくないでしょう。

さて、次は、以上をお読みいただき、成年後見制度の利用を検討されている方のために、具体的な申立手続きについて解説いたします。

3 成年後見開始等申立の具体的手続

①相談先:司法書士又は弁護士

まず、成年後見の相談先は、司法書士又は弁護士です。
成年後見の申し立ては、家庭裁判所に提出するのですが、裁判所提出書類の作成業務は、司法書士か弁護士しかできないからです。

②相談に持参すべき資料

相談に持参すべき資料は、親の収支・財産・要介護度がわかる資料です。

具体的には、親の通帳、医療費・介護費用の明細、施設連絡先メモ、固定資産税の明細、介護保険証の5点です。
以上5点をお持ちいただければ、相談の際に話が進みやすいでしょう。

③申立手数料

印紙代、各種証明資料収集実費を含め10万円前後に収まるケースが多いでしょう。

④相談後の流れ

・診断書等取得
・不足資料収集
・親の略歴・病歴・現状の生活状況・収支の流れなどのご記入
・司法書士が申立書を作成し、申立人が署名捺印
・司法書士が家庭裁判所に申立書提出
・家庭裁判所による申立人面談
・成年後見開始・成年後見人選任の審判

4 成年後見人選任後の手続の流れ

成年後見人が選任されると、親の預貯金や土地建物などの財産は後見人が管理します。

したがって、申立人などのご家族・ご親族は、成年後見人に、通帳や土地建物の権利証など財産や収支に関する資料を引き渡します。

注意すべき点は、成年後見人は、客観的に親のために、財産を維持管理する立場にあるという点です。

家族の意向があったとしても、あるいは、「お父さんだったらこう言ってくれる」という背景があったとしても、「客観的に親のためになるか」という視点で、財産管理せざるを得ない立場にあるということです。

したがって、実家を売るつもりで成年後見の申し立てをしたのに、結果的に必要性がないとして、売却が認められない、といったケースも当然起こります。

申し立てをする家族としては、「成年後見開始により、親の財産管理から解放される」という認識でいることがポイントです。

 

以上、今回は、「認知症となった親の財産の管理処分~成年後見」の解説でした。

成年後見制度の利用をご検討の方は、気軽にお問い合わせくださいませ。

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