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コラム

田舎の実家や田畑の相続~誰が引き継ぐの?

2020年10月10日相続
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岐阜の地方都市で相続のサポートをしていると、しばしば、実家や田畑を誰が引き継ぐのか?という課題に遭遇します。売れない田舎の実家や田畑を相続する際に知っておいてほしいキーワードは、「マイナスの資産」「放棄できない」「代表者一人に引き継がせる」「預貯金とセットで引き継がせる」「第三者への売却・贈与」「遺言書」の6つです。

1 結論 

結論から申し上げますと、売れない田舎の実家と田畑の相続問題に、根本的な解決策はありません。

最終的には、相続人の誰かが責任を引き受けて、実家と田畑の管理をしていくという妥協案に落ち着くこととなります。

2 田舎の実家と田畑の3つの相続の仕方 

実家と田畑を相続する方法には、おおまかに3つの方法があります。

①実家と田畑を預貯金も含めて平等に分ける
②実家と田畑を代表相続人が引き継ぎ、預貯金は平等に分ける
③実家と田畑を代表相続人が引き継ぎ、預貯金も代表相続人が引き継ぐ

さて、どの方法がお勧めなのでしょうか。

最終的に相続人全員がご納得のうえであれば、①②③どの方法で引き継いでいただいても良いのですが、専門家の観点から見てお勧めなのは③です。

①については、実家周辺に散在している宅地や田畑を、バラバラに相続したり、共有で相続すると、数字上の平等を実現できても、権利関係が複雑になったり、管理の手間が重複することになるので、お勧めできません。

②③については、売れない実家や田畑は、次に記載するように、マイナスの資産といえます。マイナスの資産を引き継ぐ代表相続人の将来的な負担を見越して、預貯金をセットで相続させることにするのが良いといえます。

よって、②ではなく③がお勧めです。

3 田舎の実家や田畑は、財産か?負債か? 

遺産相続において田舎の実家や田畑も財産としてカウントすることになります。

つまり、相続人の話し合いによる遺産分割の際も財産として取り扱われ、相続がもめた場合の遺産分割調停の際も財産として取り扱われ、遺産の額が相続税基礎控除額を超えたときの相続税申告の際も財産として評価されるのです。

しかし、現実の生活においては、田舎の実家や田畑は、しばしば、財産のようであって、実は、負債であるともいえるのです。

つまり、売りに出しても買い手がつかず、かといって、保有していれば、固定資産税や草刈りの手間費用などがかかってしまうマイナスの資産ともいえるのです。

4 二束三文と思っていた田畑に相続税がかかる? 

田舎の田畑の固定資産税は、土地の面積の割に非常に低額です。

しかし、固定資産税の評価において低額な田畑も、相続税の評価上は、数十倍に評価されてしまいます。

例えば令和2年度の岐阜県各務原市の田畑の倍率表は17倍~74倍とされます。
令和2年度の岐阜県各務原市の倍率表

したがって、固定資産税の明細で合計100万円と記載された田畑も、相続税法上は1700万円~7400万円と評価される可能性があるということなのです。

5 売れない実家や田畑は物納もできない 

売ることもできない、貰ってくれる人もいない、その上、高額に評価され相続税がかかるとなれば、国に引き取ってくれということになります。いわゆる物納です。しかし、残念ながら物納も困難です。

物納には厳しい条件が付けられており(→国税庁)、そもそも物納できるような土地であれば、売ってお金に換えることができるといえるのです。

6 相続放棄は問題の解決にはならない→誰かが引き継がなければならない 

こうした負の遺産となりうる田舎の実家や田畑は、最終的には相続人の誰かが引き継がなければなりません。

現在の法律上、実家や田畑の所有権放棄は認められません。

家庭裁判所への相続放棄も問題の解決には至りません。

すなわち、第1順位の相続人である子全員が相続放棄すると、第2順位の相続人である親に責任が移り、親も相続放棄するか死亡していると、第3順位の相続人である兄弟姉妹に責任が移り、兄弟姉妹全員が相続放棄をすると、家庭裁判所で相続財産管理人を選任するという特殊な手続きに移行します。

つまり相続放棄しても最終的に相続財産管理人が売却換金して国庫に帰属するまでは、固定資産税や草刈り等の負担は残ることになるのです。また、相続財産管理人がついたからといって売れる土地に変化する訳ではありませんから売却は簡単ではありません。

わざわざ、3段階若しくは2段階の相続放棄をした挙句に、家庭裁判所で相続財産管理人を選任したのに、売れるまで管理の負担が残るくらいであれば、最初から第1順位の相続人である子同士で話し合い、誰か一人が覚悟を決めて責任を負担すべきといえるでしょう。もちろん、その際には将来的な負担を見越して、預貯金があれば優先的に代表相続人に分配してあげると親切でしょう。

7 生前に出来る対策はあるか? 

以上のような、田舎の実家や田畑の相続について、生前に出来る対策はあるのでしょうか。
考えられる対策は、次の3つです。

①第三者への売却・贈与
②相続人への遺言
③家族信託契約

①は、隣地で農業を営む方などにお声がけするなり、不動産会社に売りに出すなりの行動をすることです。課題は、買い手・貰い手が見つかるかという点と、農地法の許可が得られるかという点です。この2点の課題をクリアできるのであれば、最もお勧めな対策となります。

②は、将来を見越して、実家や田畑の責任を負担してもらいたい相続人に実家や田畑を相続させるという遺言書を書くことです。遺言書を書かないまま相続を迎えると、預貯金の分配方法を巡ってもめる可能性が高まるので、最低限遺言書は書いておくべきでしょう。ただし、遺言書は、引き継ぐ側の相続人が、遺言を拒否すると効力を生じなくなってしまうのが難点ではあります。

③の家族信託契約を親と子が締結するという方法もあります。メリットは遺言書と違って、貰う側(管理する側)にも義務が発生するため、拘束力が強まる点です。デメリットは、田畑については農地法の許可が得られず使えないという点です。

8 まとめ 

①売れない実家や田畑はマイナスの資産
②売れない実家や田畑は代表相続人一人に集約して相続させる
③代表相続人には将来の負担を見越して預貯金をセットで分配する
④生前に出来る対策は、第一に第三者への売却又は贈与、第二に遺言書の作成

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