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コラム

子のいない夫婦の自宅の相続対策【遺言による配偶者居住権の設定】

2020年8月24日生前対策
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子のいない夫婦の夫が先に死亡した場合、相続はどうなるのでしょうか?妻は夫の兄弟姉妹と話し合いをし、自宅や預貯金の相続をすることになります。特に問題となるのが、自宅が夫の実家である場合です。妻は自宅に住み続けたい、夫の兄弟姉妹は、実家が兄嫁の家系に流れてしまうのには抵抗がある。この問題を解決するのが、配偶者居住権の設定です。

 1 子のいない夫婦の法定相続人

子のいない夫婦の夫が死亡した場合の法定相続人は、妻と夫の兄弟姉妹となります(先順位の夫の両親祖父母は多くの場合他界しているでしょう)。

夫の兄弟姉妹で先に死亡している方がいた場合は、その子(甥姪)が代襲相続人となります。

法定相続分は妻が4分の3、夫の兄弟姉妹又は甥姪は全員合わせて4分の1です。

 2 子のいない夫婦が死亡したとき遺言書がないとどうなるか?

子のいない夫婦の夫が死亡したとき、遺言書がないと、妻は夫の兄弟姉妹全員と話し合って、遺産を引き継ぐこととなります。

妻の法定相続分は4分の3と法的立場は強いものの、夫の遺産相続のために義理の兄弟姉妹と話し合うことは、かなりの精神的負担となります。

 3 遺産に夫の家系の実家が含まれている場合は、誰が実家を相続するのか?

特に問題となるのが、遺産に夫の家系の実家が含まれている場合です。

長男の夫と結婚して、夫の実家に入り、30年以上生活を共にし、夫の両親の世話もみてきたけれども、子に恵まれず、実家の後継ぎがいない。

夫が先に死亡した場合、実家の名義は誰の名義に変更すべきでしょうか?

妻の名義にすれば、妻が亡くなった時、夫の実家は妻の兄弟姉妹が相続することとなります。

夫の兄弟姉妹の名義にすれば、妻は義理の兄弟姉妹の家に住むこととなり、いつ退去を迫られるか分かりません。

 4 これまでの対策と問題点 

これまでの対策としては、次の2通りの対策が考えられました。

①妻名義にしつつ妻が死亡した場合は夫の兄弟姉妹に遺贈する旨の遺言書を書く。

②夫の兄弟姉妹の名義にしつつ妻が家賃を払って住む。

しかし、①の遺言は妻と義理の兄弟姉妹の関係が悪化すれば撤回される可能性があります。

②も契約書をしっかり交わしたとしても、関係が悪化すれば問題が生じます。

以上のような問題もあり、2020年4月から配偶者居住権という制度が始まりました。

 5 遺言により配偶者居住権を設定しておけば安心 

夫は、自分が死んだときに妻や兄弟姉妹が困らないように、遺言書で配偶者居住権を設定することができます。

つまり、夫は遺言書を書いて、自宅は兄弟姉妹の所有とするとともに、妻のために配偶者居住権を設定するのです。

こうすることで、妻は死ぬまで自宅に無償で(ただで)住み続けることができます。

妻が死亡したときは、配偶者居住権は消滅し、夫の兄弟姉妹又は甥姪が、負担のない自宅の所有権を引き継ぐことができるのです。

 6 配偶者居住権の3つの条件 

 

①自宅に故人と配偶者以外の共有名義がないこと

自宅に夫婦以外の名義があると配偶者居住権は認められません。

②配偶者が相続時に自宅に住んでいること

夫婦仲が悪く別居していたときなどは配偶者居住権は設定できません。

③遺言書に配偶者居住権設定の定めがあること

2020年4月1日以降に作成した遺言書により配偶者居住権が設定されることが必要です。

遺言がなかった場合は遺産分割協議で配偶者居住権を設定することもできます。

 

 7 配偶者居住権の設定手続き 

 

①遺言書(又は遺産分割協議書)

遺言書等により配偶者居住権を設定する旨を定めます。
公正証書遺言78,000円+公証人手数料

②相続による自宅の名義変更(相続登記・そうぞくとうき)

自宅の名義を夫の兄弟姉妹の名義にします。
司法書士報酬約5万円+固定資産税評価額の0.4%の登録免許税

③配偶者居住権の設定登記

夫の兄弟姉妹名義の自宅に配偶者居住権の設定登記をします。
司法書士報酬約3万円+固定資産税評価額の0.2%の登録免許税

 8 まとめ 

 

○子のいない夫婦は、お互いの相続のときに義理の兄弟姉妹と遺産分割協議をしなくて済むように、かならず夫婦そろって遺言書を書いておく

○子のいない夫婦の自宅が夫の実家である場合、夫が、自宅を妻に住まわせつつ、最終的には自分の家系に引き継がせたいときは、遺言書で配偶者居住権を設定する。

○遺言がない場合は、妻と夫の兄弟姉妹が遺産分割協議をし、自宅の所有権は夫の兄弟姉妹に引き継がせつつ、妻のために配偶者居住権を設定する。

○以上の対策により、妻は生きている間は、気兼ねなく自宅に住み続けることができ、夫の兄弟姉妹も最終的に実家が自分たちの家系に引き継がせることができ安心です。

 

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