誰が法定相続人?そして相続人は誰?
- 2020年8月10日相続
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相続手続は、「相続人全員で」遺産分けの話し合いをして、遺産の名義変更をします。今回は、「法定相続人」と法定相続分について重点的に解説します。「法定相続人」のうち3か月以内に相続放棄をしなかった人が、正式に「相続人」となり、遺産分割協議の参加者となります。
◆法定相続人と法定相続分
法定相続人は、故人(被相続人)の遺産を引き継ぐ相続人予定者のことです。被相続人の死亡から原則3か月以内に相続放棄をしなかった法定相続人は、正式に「相続人」となります。
法定相続人(相続人予定者)であっても、遺産相続に関わりたくない方は、3か月以内に相続放棄をすることで、「相続人」でなくなることができます。
被相続人に配偶者がいれば常に法定相続人となります。配偶者以外の法定相続人には順位があります。
第1順位の法定相続人は子、第2順位の法定相続人は親、第3順位の法定相続人は兄弟姉妹です。
1 配偶者と子が法定相続人の場合
①「子」の範囲
前妻との間の子、後妻との間の子、認知した子、養子縁組した孫、婿養子。
これらはすべて「子」として第1順位の法定相続人となります。
これらの子のうち被相続人より先に亡くなった子がいる場合には、亡くなった子の子(被相続人の孫)が代襲相続人として第1順位の相続人となります。先に亡くなった子のことを被代襲者といいます。
②配偶者と子の法定相続分
配偶者が2分の1、子は何人いても合計で2分の1の法定相続分です。
被相続人に配偶者がいない場合は子に100%の法定相続分があります。
子が複数いる場合は、原則として平等です。前妻との間の子、後妻との間の子、認知された子、養子、すべて平等です。ただし、代襲相続人は被代襲者を基準として考えます。
例えば、被相続人に、後妻A、前妻との間の長女B、後妻との間の長女C、被相続人と養子縁組したCの夫D、後妻との間の亡二男E、Eの長女F、Eの二女G、認知した子Hがいる場合、法定相続分は、次の通りとなります。
Aの法定相続分=1/2=50%
Bの法定相続分=1/2×1/5=1/10=10%
Cの法定相続分=1/2×1/5=1/10=10%
Dの法定相続分=1/2×1/5=1/10=10%
Fの法定相続分=1/2×1/5×1/2=1/20=5%
Gの法定相続分=1/2×1/5×1/2=1/20=5%
Hの法定相続分=1/2×1/5=1/10=10%2 配偶者と親が法定相続人の場合
①「親」の範囲
被相続人に「子」がいない場合は、被相続人の両親が第2順位の法定相続人となります。両親が共になくなっている場合でも4人の祖父母の誰かが生きていればその祖父母が法定相続人となります。
②配偶者と親の法定相続分
配偶者が3分の2、親は生きている親が1人でも2人でも合計で3分の1の法定相続分です。
被相続人に配偶者がいない場合は親に100%の法定相続分があります。
3 配偶者と兄弟姉妹が法定相続人の場合
①「兄弟姉妹」の範囲
被相続人に「子」も「親」もいない場合は、被相続人の兄弟姉妹が第3順位の法定相続人となります。
兄弟姉妹は、両親を同じくする兄弟姉妹、異母兄弟姉妹、異父兄弟姉妹、これらはすべて「兄弟姉妹」として第3順位の法定相続人となります。
これらの兄弟姉妹のうち被相続人より先に亡くなった兄弟姉妹がいる場合には、亡くなった兄弟姉妹の子(被相続人の甥姪)が代襲相続人として第3順位の法定相続人となります。先に亡くなった兄弟姉妹のことを被代襲者といいます。
②配偶者と兄弟姉妹の法定相続分
配偶者が4分の3、兄弟姉妹は何人いても合計で4分の1の法定相続分です。
被相続人に配偶者がいない場合は、兄弟姉妹に100%の法定相続分があります。
兄弟姉妹が複数いる場合は、原則として平等です。ただし、異母兄弟姉妹、異父兄弟姉妹は、両親を同じくする兄弟姉妹の半分の法定相続分です。また、代襲相続人は被代襲者を基準として考えます。
例えば、被相続人に、妻A、異母姉B、亡兄C、Cの長女D、Cの長男E、妹Fがいる場合、法定相続分は、次の通りとなります。
Aの法定相続分=3/4=75%
Bの法定相続分=1/4×1/5=1/20=5%
Dの法定相続分=1/4×2/5×1/2=2/40=5%
Eの法定相続分=1/4×2/5×1/2=2/40=5%
Fの法定相続分=1/4×2/5=2/20=10%◆法定相続人と戸籍
以上の法定相続人は、原則的に戸籍により確認します。
1 配偶者と子が法定相続人の場合に取得する戸籍
原則的に、被相続人の出生から死亡までの戸籍と、子の戸籍謄本を取得して確認します。
→相続人調査2 配偶者と親が法定相続人の場合
原則的に、被相続人の出生から死亡までの戸籍と、両親の戸籍謄本を取得して確認します。
→相続人調査3 配偶者と兄弟姉妹が法定相続人の場合
原則的に、被相続人の出生から死亡までの戸籍と、両親の出生から死亡までの戸籍、兄弟姉妹の戸籍謄本を取得して確認します。
→相続人調査◆法定相続人と法定相続情報証明書
相続人調査による戸籍の取得で明らかになった法定相続人を、A4用紙1枚にまとめた証明書を法定相続情報証明書といいます。
法定相続情報証明書は、取得した戸籍一式と相続人全員の戸籍の附票又は印鑑証明書を管轄法務局に提出して10日ほどで発行されます。
発行された法定相続情報証明書は、預貯金や上場株式等の名義変更などの際に使用します。
◆法定相続人と相続の承認・放棄
1 法定相続人と相続の承認・放棄
法定相続人は相続の承認をすることにより正式な相続人となります。
法定相続人は相続の放棄をすることにより相続人でないことが確定します。相続の承認をするか放棄をするかは、原則的に相続人となったことを知った時から3か月以内に相続放棄をするか否かで決まります。3か月以内に相続放棄をしなかった法定相続人は、原則的に、自動的に相続人となるのです。ですので、3か月以内に相続放棄をする人がいなかった場合は、法定相続人=相続人となります。
2 相続放棄後の相続人
3か月以内に相続放棄をした法定相続人がいる場合の相続人は次の通りとなります。
①子の一部が相続放棄した後の相続人
残りの「子」が相続人となります。配偶者がいて相続放棄をしていなければ配偶者も相続人となります。
②子の全員が相続放棄した後の相続人
次順位の「親」が相続人となりますが、「親」が全員死亡しているときは「兄弟姉妹」が相続人となります。
配偶者がいて相続放棄をしていなければ配偶者も相続人となります。③兄弟姉妹の一部が相続放棄した後の相続人
残りの「兄弟姉妹」が相続人となります。配偶者がいて相続放棄をしていなければ配偶者も相続人となります。
④兄弟姉妹の全員が相続放棄した後の相続人
兄弟姉妹は最終順位(第3順位)の相続人なので、兄弟姉妹全員が相続放棄をして、かつ配偶者がいないか、いても配偶者も相続放棄をした場合は、相続人不存在となります。
相続人不存在の場合において被相続人に処理すべき遺産があるときは、利害関係人の申立てにより相続財産管理人を選任し、遺産整理をすることとなります。
◆遺産分割協議の当事者は「相続人」
遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分けの話し合い(遺産分割協議)をして、遺産を取得する相続人を決定します。
→遺産分割協議書遺産分割協議をする相続人は、相続放棄をした法定相続人を除く「相続人」です。
◆推定相続人
推定相続人とは、本人が生存している場合において、今死亡したら法定相続人となるべき人のことです。
つまり法定相続人予定者です。配偶者と子がいれば、配偶者と子が法定相続人予定者=推定相続人となります。◆法定相続分と遺留分
兄弟姉妹以外の法定相続人には遺留分という権利があります。
遺留分は、遺言や生前贈与で遺産の大半が、特定の人(相続人に限られません)の手に渡ってしまった場合に、法定相続分の原則半分を遺留分として支払ってくれと言える権利のことです。
遺留分の割合は、原則として法定相続分の半分ですが、親のみが法定相続人の場合は3分の1となります。
◆まとめ
法定相続人、法定相続分、遺留分は、遺産分割協議書で合意が必要な相続人を確定したり、相続がもめた場合の権利主張の範囲の基準となる概念です。簡単なようで実は複雑なので、あまり難しく考えず、相談先や依頼先の専門家に任せて確認するとよいでしょう。
多くの事務所で相続の初回相談は無料で実施しております。
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