遺産調査【10選】
- 2020年7月31日相続
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遺産相続手続きにおいて、遺産の調査は重要です。多くのご家庭において遺産は、家などの不動産と預貯金ですから、遺産調査は簡単です。逆に、故人が借金をしていたり、資産運用をしていたりすると、遺産調査も少々複雑になります。今回は代表的な10種類の遺産調査について解説いたします。
1 所有不動産の調査
土地・建物などの不動産の調査は、固定資産税の納税通知書→固定資産評価証明書又は名寄帳→自宅等に保管されている登記済証の順番で調査し、最終的には専門家が登記情報により具体的な権利関係・持分を確認します。
【1-1】固定資産税の課税明細
まずは、毎年4月~5月頃に市区町村から郵送されてくる固定資産税の納税通知書の中にある課税明細を確認します。多くのケースにおいては固定資産税の課税明細に記載された不動産=被相続人(故人)が所有していた不動産となります。
ただし、以下の通り課税明細に記載されない不動産もありうるため、必要に応じて、さらなる調査が必要です。
【1-2】固定資産税の評価証明書・名寄帳
固定資産税の評価額が低額で非課税となっている田畑や山林、道路等の公共用地として非課税となっている道路敷、共有の土地・建物、築年数が古く評価額20万円未満の非課税家屋等は固定資産税の課税明細に記載されません。
そこで、上記のような不動産がある可能性がある場合は、市区町村役場の税務課で、固定資産税の評価証明書又は名寄帳を取得します。
ポイントは、「非課税物件・共有物件を含むすべて、道路敷等の未評価物件は仮評価又は近傍類似価格をお願いします」として請求することです。
また請求に際しては被相続人との関係が分かる戸籍(原則、被相続人の戸籍と請求者の戸籍→参照リンク)を持参する必要があります。
【1-3】登記済証・登記識別情報等
故人が亡くなった年の1月1日以降に不動産を購入していた場合や住所地の市区町村外の別荘地等に固定資産税非課税の別荘用地を購入していた場合等には、登記をした当時の、登記済証・登記識別情報等の登記書類があると、それを手掛かりに、被相続人名義の不動産を発見できることがあります。
【1-4】登記情報
課税明細、評価証明書又は名寄帳、登記済証等で判明した不動産について、具体的な権利関係や持分を確認するため、登記情報を取得します。
2 借りている不動産の調査
被相続人が土地や建物を借りていた場合、被相続人の賃借権や地上権が遺産となります。賃借権や地上権は、通帳の地代・家賃の振込記録や、賃貸借契約書などにより権利関係を確認します。
3 貸している不動産の調査
被相続人が土地や建物を貸していた場合、被相続人の賃貸人たる地位は遺産となります。賃貸人たる地位は、通帳の地代・家賃の入金記録や、賃貸借契約書、確定申告書などにより権利関係を確認します。
4 現金の調査
現金については、自宅や貸金庫等に保管されている現金や親族・世話人等が保管している現金等を確認します。
5 預貯金の調査
【5-1】通帳・キャッシュカード・証書
まずは自宅や貸金庫等、親族・世話人が保管している通帳・キャッシュカード・証書を確認します。
【5-2】銀行・信用金庫・ゆうちょ銀行等に残高照会・現存照会
相続人が被相続人の取引金融機関を把握している場合は、通帳等をもとに、取引支店で残高証明書を取得します。相続開始3年以内に生前贈与又は高額な入出金等がある場合は、取引履歴の開示請求も行います。
相続人が被相続人の取引金融機関を把握していない場合は、最寄りの取引のありそうな金融機関等に現存照会を行い確認します。
6 保険契約の調査
被相続人が契約者となっていた保険契約は、保険証券や保険会社からの郵送物等により内容を確認します。相続手続き上の取扱いは、以下の通りとなります。
①契約者=被相続人、被保険者=被相続人、受取人=相続人
いわゆる死亡保険金は相続財産ではなく遺産分割の対象から外れます。ただし、相続税の算定においては生命保険料控除(500万円×法定相続人数)を超える額が遺産の額としてカウントされるため、金額を把握しておく必要があります。
②契約者=被相続人、被保険者=相続人、受取人=相続人
被保険者が相続人であるため契約は継続し、相続財産(遺産)として遺産分割の対象となります。通常は被保険者となっている相続人が保険契約を引き継ぐことになるでしょう。
③契約者=被相続人、被保険者=相続人、受取人=被相続人
被保険者が相続人であるため契約は継続し、相続財産として遺産分割の対象となります。通常は被保険者となっている相続人が保険契約を引き継ぐことになるでしょう。また受取人の変更手続きも必要です。
7 上場株式・投資信託等の調査
【7-1】取引報告書等
まずは、自宅にある郵便物等の中から取引報告書等で取引のある証券会社等を確認し、残高証明書・相続届出用紙を請求します。
【7-2】登録済加入者情報開示請求書
取引報告書等がなく、被相続人が資産運用をしていた証券会社等が不明な場合は、証券保管振替機構に、開示請求を行います。開示結果通知書が届いたら、そこに記載された各証券会社に残高証明書・相続届出用紙を請求します。
8 自社株(未上場株式)の調査
被相続人が、会社経営者等で自社株等(未上場株)を保有していた場合には、決算書の同族会社等の判定に関する明細書で、被相続人の株式数を確認します。また、遺産分割の前提として、また相続税基礎控除の判定の前提として、必要に応じて顧問税理士による株価算定が必要となります。
9 自動車の調査
自動車については、車検証を確認し、所有者が被相続人かディーラー等か確認します。所有者が被相続人でなく、ディーラー等である場合には、ディーラーやクレジット会社に問い合わせ、残債の有無等を確認します。
10 債務の調査
借金等がある可能性のあるときは、次の3つの信用情報機関に開示請求を行います。
①CIC
②JICC
③全国銀行個人信用情報センターまとめ
遺産(相続財産)調査の基本は、不動産と預貯金です。
被相続人が契約者又は被保険者となっている保険がある場合は、保険証券も確認する必要があります。
最近は資産運用をする方も増えてきたので、上場株式等の調査が必要となるケースも増加傾向にあります。
借金等の債務がある場合は3か月以内に相続放棄をするか判断する必要があるため、速やかに専門家に相談する必要があります。
専門家に相談する際は、【相続人調査】【遺産調査】【遺産分割】【遺産の名義変更】の各手続きについて、どこまで依頼するか、見積金額も含めて確認してから手続きを進めるようにしましょう。