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コラム

相続放棄の手順と3か月の期間制限

2020年8月20日相続
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相続放棄は遺産をまるごと放棄する手続きです。借金だけでなく財産もすべて放棄することになります。原則として自分が相続人になったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に相続放棄申述書を提出しなければなりません。

相続放棄申述書【記載例】

 1 相続放棄は遺産をまるごと放棄すること 

 

相続放棄は、遺産をまるごと放棄することです。
借金だけでなく財産もすべて放棄することになります。
例外的に生命保険金は、相続財産ではなく、保険契約上の保険事由(故人の死亡)により受取人に支払われるお金のため、相続放棄をしても受け取ることができます。

 

 2 相続放棄の動機は何でもよい 

 

相続放棄の動機(理由)は何でも構いません。

考えられる動機としては、
・借金を引き継ぎたくない。
・故人とは疎遠なため遺産を引き継ぐつもりがない。
・相続トラブルに巻き込まれたくない。
・お金に困っていないので遺産はいらない。
などが考えられますが、いずれの理由でも相続放棄できます。

そもそもが法定相続人であるからといって相続しなければならないわけではなく、3か月以内に相続を承認するか放棄するかの選択肢が与えられているからです。

 

 3 3か月の期間制限について 

 

3-1 原則3ヶ月以内に相続放棄申述書を家庭裁判所に提出すること

相続放棄をしたい場合は、自分が相続人であることを知った時から3か月以内に家庭裁判所に相続放棄申述書を提出しなければなりません。

3-2 3か月経過後でも相続放棄が認められる余地はある

3カ月を経過した後であっても、次のようなやむを得ない事情があると認められる場合は相続放棄が認められる可能性があります。

○遺産調査をしたにもかかわらず見つけられなかった負債が後日判明した場合
○故人との関係が疎遠で遺産調査をすること自体が期待できなかった場合

3-3 相続放棄申述書が受理されることと裁判の結果は別問題

3か月経過後にした相続放棄申述が家庭裁判所に受理されたとしても、確定的な効果があるわけではありません。

債権者としては、相続放棄が受理されたとしても、訴訟で相続放棄の効果を争うことが可能だからです。

訴訟の結果、相続放棄が否定され、借金を背負うことになる可能性があることに留意し、可能な限り3か月以内に相続放棄すべきでしょう。

3-4 法の無知は通用しない

法の無知も通用しません。3か月以内に相続放棄をしなければならないという法律を知らなかったことを理由に相続放棄が認められることはありません。

3-5 故人の子が未成年者であるとき

配偶者(子の母)と子が同時に相続放棄をする場合は、母が子の分の相続放棄も、親権者として手続きをすることができます。

しかし、配偶者(子の母)が相続放棄をしないで、未成年の子だけ相続放棄をしたい場合は、未成年者のために家庭裁判所で特別代理人を選任し、特別代理人が相続放棄をするかどうかの判断をします。

3-6 故人の子全員が相続放棄をしたときは故人の親又は兄弟姉妹に連絡をする

故人が借金を抱えていて、子の全員が相続放棄をする意向であるときは、故人の親や兄弟姉妹にも知らせておきましょう。

第1順位の相続人である子の全員が相続放棄すると、第2順位の相続人である故人の親が相続人として相続放棄をし、親も相続放棄(又は死亡)した場合は、故人の兄弟姉妹が第3順位の相続人として相続放棄をすることとなります。

法定相続人

この場合の3ヶ月の期間制限は先順位の相続人全員が相続放棄をしたことを知った時から計算します。

専門家に依頼するときは、子・親・兄弟姉妹及び配偶者の相続放棄をまとめて相談することになるでしょう。

 

 4 重要なのは1ヶ月以内に初回専門家相談を受けること 

 

相続で何よりも重要なことは、故人の死亡を知った時から1ヶ月以内に初回専門家相談を受けることです。

1か月以内に初回相談を受けるべき一番大きな理由は、相続放棄の3ヶ月の期間制限です。

相続放棄をするには、戸籍を集めたり、遺産を調査するのに1カ月前後の時間がかかります。

余裕をもって相続を承認するか放棄するかの判断をできるためにも、1ヶ月以内に初回専門家相談を受けましょう。

 

 5 相続放棄の手順 

 

5-1 初回相談

初回相談はなるべく1ヶ月以内に受けるようにしましょう。
相続相談のポイント

5-2 戸籍の収集

相続を承認するにせよ放棄するにせよ、戸籍の収集が必要です。

相続放棄をすることが決まっている場合は、最低限、故人の最後の戸籍(除籍)全部事項証明書と戸籍の附票、相続放棄をする子又は親の戸籍謄本と戸籍の附票をあつめます。

相続放棄をするのが兄弟姉妹であるときには、故人と故人の両親の戸籍を出生までさかのぼって取得します。

ここまでくると段々複雑になるので、戸籍の取得は専門家に代行依頼するのがお勧めです。

戸籍の取得・代行

5-3 遺産調査

故人の遺産を綿密に精査して相続を承認するか放棄するか検討したい場合は、預貯金の全店照会や、負債の有無を調査するため信用情報機関に照会を求めることとなります。

遺産調査

その結果、多額の負債が判明した場合は、相続放棄をし、多額の負債が判明しなかった場合は相続を承認し相続手続を進めることとなります。

もっとも、相続放棄の動機(理由)に決まりはないので、遺産を引き継ぐつもりがない、相続に関わりなくないという場合は、遺産調査をせずに相続放棄をすることも可能です。

5-4 相続放棄申述書の提出

戸籍が揃ったら、故人の住所地を管轄する家庭裁判所に相続放棄申述書を提出します。

3か月を経過している場合は、申述書とともに、理由を記載した上申書も提出します。

相続放棄申述書(裁判所様式)
管轄家庭裁判所

5-5 家庭裁判所からの照会に対する回答

相続放棄申述書提出から数週間で家庭裁判所から照会書が届きます。

照会書は相続人本人の意思により相続放棄をすることを確認する書類です。

必要事項を記載して申述書に押印した印鑑と同じ印鑑を押印して返送します。

5-6 相続放棄申述受理通知書の発行

照会書を返送して、相続放棄が認められれば、家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が発行されます。

相続放棄申述受理通知書は、相続放棄をしなかった相続人が、遺産を相続するに際しての証明書となりますので、コピーをとったうえで原本を渡してあげると親切でしょう。

 

 6 相続放棄後の手続 

 

6-1 子の一部が相続放棄した場合

残りの子(配偶者が相続放棄をしていなければ配偶者も)が相続人として戸籍一式(→戸籍の取得)と相続放棄申述受理通知書により相続手続を進めます。

残りの子・配偶者が複数いれば、遺産分割協議をしたうえで遺産の名義変更をします。

遺産分割協議書 →実家の相続 →預貯金の相続

6-2 子全員が相続放棄し親が相続人となる場合

親(配偶者が相続放棄をしていなければ配偶者も)が相続人として戸籍一式(→戸籍の取得)と子全員の相続放棄申述受理通知書により相続手続を進めます。

両親が共に健在であれば、二人で遺産分割協議をしたうえで遺産の名義変更をします。

遺産分割協議書 →実家の相続 →預貯金の相続

6-3 子全員が相続放棄し親も死亡または相続放棄した場合

兄弟姉妹(配偶者が相続放棄をしていなければ配偶者も)が相続人として戸籍一式(→戸籍の取得)と相続放棄申述受理通知書により相続手続を進めます。

相続放棄をしなかった兄弟姉妹が複数いれば、遺産分割協議をしたうえで遺産の名義変更をします。

遺産分割協議書 →実家の相続 →預貯金の相続

6-4 兄弟姉妹全員が相続放棄した場合

兄弟姉妹全員(代襲相続人がいる場合は代襲相続人である甥姪も全員)が相続放棄をすると相続人不存在となり、相続財産管理人が故人の遺産を管理し、最終的に換金して負債や費用の返済に充当します。

 

 7 まとめ 

 

○相続相談は1ヶ月以内に受けることがお勧め。
○相続放棄は遺産をまるごと放棄する手続きであることを理解する。
○どんな理由でも相続放棄したければ放棄できる。
○3か月の期間は厳密に守る。
○3か月を経過してしまった場合でも諦めずに専門家に相談して相続放棄の申述書を提出する。
○戸籍の取得は必ず必要だが遺産調査は相続放棄の必須事項ではない。はじめから相続に関わりなくなければ遺産調査せずに相続放棄をしてよい。
○故人が多額の借金を抱えていた場合は、故人の配偶者・子・両親・兄弟姉妹が連絡を取り合って相続放棄をすることが大切。

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