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コラム

「とりあえず母が全部相続」は正解か?

2020年8月27日相続
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今年の2月に父が亡くなり、実家や預貯金の相続をしなければなりません。父の子は長女の私を含め、長男、二女がいます。私も二女も結婚して外で暮らしており、長男である弟が実家で同居しています。母が言うには、とりあえず母が全部相続して、母が死んだときに3人で話し合って分けてくれればよいといいます。母の言うとおりに遺産を分けても良いでしょうか?

 1 結論 

 

1-1 「とりあえず母が全部相続」は問題の先送り。

1-2 父の相続のときに子の名義に出来るものは子の名義にしておくのが望ましい。

1-3 母が相続した遺産については2次相続に備えて遺言書を準備しておくのがよい。

 

 2 家族にとっていい相続とは? 

相続手続きの最優先事項は、家族全員にとって何が大切かを確認することです。
それぞれの家族において大切なことは様々ですが、抽象的には次の4点に集約されるのではないでしょうか。

2-1 家族円満

相続において家族円満は大切ですよね。なれ合いで言いたいことも言えないのは健全とは言えませんが、お互いに大人として伝えるべきことは伝え、聴くべきことは聴く関係性が理想的です。
→【後記:3-1 遺産の中身をオープンにし、公平な立場に立って考える】

2-2 親の老後の安心

父の相続のときに子の名義に出来るものは子の名義にしておくのが望ましいです。とはいっても、母も老後の生活がありますから、母の財産が少なくなってしまうのは不安です。
→【後記:3-3 配偶者居住権を活用する】
→【後記:3-4 お金の分配と介護・身上監護の話をセットでする】

2-3 資産凍結の防止

母に自宅や老後資金を渡したい一方で、母の認知症による資産凍結リスクがあります。将来的に、自宅の売却・引越しやリフォーム、土地の利活用などの可能性がある場合は、母の認知症による資産凍結リスクに備える必要があります。
→【後記:3-3 配偶者居住権を活用する】
→【後記:3-4 お金の分配と介護・身上監護の話をセットでする】

2-4 純資産額・収益性の目減りの防止

相続におけるお金の問題とは、純資産額・収益性の目減りの抑制です。
相続というと節税に目が行きがちですが、税金が少なくなっても、純資産額が減少していたり、将来的な収益性が低下していては意味がありません。

純資産額や収益性の目減りの原因は次のようなものです。

・1次相続で母に全部相続して相続税を免税した結果、2次相続で必要以上の相続税が発生。
・相続税対策としてアパート建築し相続税は減少したが、肝心のアパートの収益性が悪く、純資産額が減少。
・内容も理解しないまま必要以上の生命保険に加入。
・1次相続で問題を先送りにした結果、2次相続で揉め多額の裁判費用がかかる。
・遺言書や生前贈与といった生前対策を怠ったために相続トラブルとなる。

純資産額の目減りを防ぐには、これらのリスクを回避することが必要です。

→【後記:3-2 父の1次相続と母の2次相続を通して遺産の引き継ぎ先を考える】
→【後記:3-3 配偶者居住権を活用する】
→【後記:3-5 最悪の事態に備えて遺言書と生命保険で2次相続に備える】

 3 家族にとって良い相続を実現するポイント 

 

3-1 遺産の中身をオープンにし、公平な立場に立って考える

遺産の中身が分かると取り分を主張されるかもしれないから、いきなり遺産分割協議書を出して押印だけお願いする。

こういった初期対応がうまくいくのは、次の3条件を満たして暗黙の了解が成立しているときに限られます。
・長男が実家を相続
・介護も含めて実家らしい対応をしてきた
・子同士の仲が極めて良好

暗黙の了解が成立していない場合は、「隠されている」という気持ちを抱かれないためにも、初めから遺産の中身をオープンにして話を始めたほうがよいでしょう。

具体的には、専門家に、遺産目録を作成してもらい、遺産目録をもとに、遺産分割の話し合いを進めます。

遺産の中身をオープンにされれば、相手も公平に扱ってもらっている、という気持ちで話し合いに参加することができるのです。

遺産調査 →遺産分割協議

3-2 父の1次相続と母の2次相続を通して遺産の引き継ぎ先を考える

遺産相続は、父の1次相続と母の2次相続を通して遺産の引き継ぎ先を考えることが大切です。

理由は、2次相続での相続トラブルの回避と2次相続での相続税の課税又は増税の回避の2点です。

①2次相続での相続トラブルの回避

父が亡くなった1次相続のときこそ、母を交えて子に引き継がせるべき財産は何かを真剣に考えるとよいでしょう。将来的に母が亡くなった時の2次相続の際は、親の後ろ盾が無くなり、子同士で揉める確率が高くなるからです。

1次相続で母に大半を相続させて問題を先送りにすると、2次相続で子同士の相続トラブルを引き寄せる可能性がありますのでご注意ください。

②2次相続での相続税の課税又は増税の回避

1次相続の際に、安易に母に全部相続させると、2次相続の際に本来であれば必要のなかった税金を払うことになるかもしれません。

父と母の財産の合計額が5000万円を超えているようなケースでは、1次相続の際に母に全部相続させるのではなく、子に引き継がせるべき財産を1次相続である程度、引き継がせておくことが1次2次相続を通じた良い対策と言えるでしょう。

3-3 配偶者居住権を活用する

実家・自宅については、「相続税課税案件で、かつ母について小規模宅地の特例を利用することが最適」と言える場合以外は、1次相続で所有権は子に引き継がせ、母は配偶者居住権により、自宅を確保するのが良いでしょう。

こうすることで、遺産の平均40%を占める自宅等不動産の1次2次を通じた相続が完了し、相続トラブルの大半の心配がなくなります。

実家・自宅については、1次相続の時点で配偶者居住権の活用を検討しましょう。

配偶者居住権の設定

3-4 お金の分配と介護・身上監護の話をセットでする

相続と介護・身上監護の話はセットでするべきでしょう。

子が何人かいる場合は、将来的に子の一人が、主に介護や身上監護をすることになるでしょう。

子も、お金目当てで介護をするわけではないですが、介護の苦労は経験した人でないと分からないほど大変といわれます。

介護を頼むことになる子には、1次相続において、優先的に預貯金を配分するとよいでしょう。

例えば、1次相続において、母には、毎月の生活費を考えて、年金で賄えない部分を補えるような預貯金を相続させつつ、親子間の信頼関係があるのであれば、余った預貯金のうち、介護を頼むことになる子に優先的に相続させ、「いざというときは頼むよ」という相続のさせ方も一つの方法でしょう。

3-5 最悪の事態に備えて遺言書と生命保険で2次相続に備える

1次相続で父の遺産の一定部分を子に引き継がせたとしても、母には生活資金としての預貯金や、場合によっては不動産などの財産が残ります。

母が亡くなる2次相続においても、最悪の事態に備えて遺言書を準備するとよいでしょう。

今は、子同士の関係が良好でも、子それぞれの家庭や生活環境の変化により、2次相続の際に相続トラブルが起こる可能性は充分にあります。

最悪の事態に備えて遺言書を準備しておくとよいでしょう。

自筆証書遺言 →公正証書遺言

また、不動産の価格と預貯金の金額を考慮して、遺留分の支払いに備えた生命保険金を検討したほうがよいケースもあるでしょう。

 まとめ 

○専門家に遺産目録を作成してもらい、遺産の中身をオープンにして遺産分割協議をしましょう。
○父の1次相続と母の2次相続を通して遺産の引き継ぎ先を考えましょう。
○配偶者居住権は、必ず検討しましょう。
○お金の分配と介護の問題はセットで考えましょう。
○2次相続に備えて遺言書を準備しておきましょう。

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