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コラム

亡父が認知した異母兄弟と連絡がとれず相続が進まない

2020年10月17日相続
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亡父が認知した異母兄弟と連絡がとれず相続が進まない。幸い父名義の実家の土地は、生前贈与で名義変更を済ませているけれど、預貯金と、受取人を法定相続人とする生命保険を受け取るには相続人全員の実印が必要と言われてしまった。どうすればいい?

 1 結論 

異母兄弟と連絡がとれない場合の相続手続きについて

①預貯金については、各相続人は法定相続分に応じて受け取ることができる。

②死亡保険金については、受取人の記載次第。
受取人に特定の相続人が記載してあれば、その相続人が一人で受け取ることができる。
受取人に「法定相続人」と記載してある場合は、同意の得られる相続人の法定相続分のみ保険金を受け取ることができる。

③土地建物については、問題解決に時間とお金がかかる。
連絡がとれない理由が、「関係が険悪」ということであれば、遺産分割調停(裁判)で解決する。
連絡がとれない理由が、「音信不通」であれば、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任申立をする。
いずれにしても、原則的には、異母兄弟又は不在者財産管理人に分配するするお金を用意する必要がある。

④したがって、土地建物については、生前贈与か遺言を準備しておくことが不可欠。
幸いにも事例では数年前に相続時精算課税制度を利用した生前贈与を済ませており、事なきを得た。

 

 2 相続には兄弟姉妹全員の合意が必要 

実家、預貯金などの遺産相続手続きには、相続人全員の合意が必要です。

つまり、実家や預貯金を、誰が、どういう割合で相続するかを記載した遺産分割協議書を作成して、相続人全員がサインと実印を押印することが必要となるのです。

ここで相続人全員とは子全員のことです。もちろん母が健在であれば母も相続人です。

少し掘り下げてみます。

 

 3 相続人は誰か?相続人をみていけば将来の相続トラブルが想定できる 

ここで実印が必要な子全員とは、次のような方のことです。
カッコ内は、実家を継いでいる長男から見た関係を示しています。

①嫁に出た長女・次女など(実の兄弟姉妹)
→家督相続制度は廃止されているので嫁に出た長女や次女などにも平等な相続権があります。

②養子に出た二男(実の兄弟姉妹)
→養子に出た二男も、実の親との関係は途切れることなく、相続権も失いません。

③養子縁組した長女の夫や孫(義理の兄弟姉妹)
→いわゆる後継ぎとなる長男がいないために、長女の夫と養子縁組して実家を継がせることがあります。また、相続税対策として実家を継いでいる長男の子(孫)と養子縁組することもあります。こうして養子となった方も、実子と同様に平等な相続権があります。

④先に亡くなった三男の子で縁を切った関係にある方(甥姪)
→亡三男の子は、三男の代襲相続人(だいしゅうそうぞくにん)として、相続権があります。つまり、甥姪は、亡三男の相続権を引き継ぐのです。たとえ社会的に縁を切った場合でも法律上は平等な相続人となるのです。

⑤父の前妻との間の子(異母兄弟姉妹)
→父が再婚で、離婚した前妻との間に子がいた場合、たとえ関係が途切れており、まったく連絡を取っていない場合でも、相続権は平等に存在します。

⑥父の再婚相手との間の子(異母兄弟姉妹)
→父が母と離婚し、後妻と再婚した場合は、後妻にも相続権はありますし、後妻との間に子がいれば、その子(異母兄弟姉妹)にも相続権はあります。

⑦父が認知した子(異母兄弟・非嫡出子)
→今回の事例がこのケースです。事例の長男は、もともと父に認知した子がいることを知っていましたが、「戸籍をとってみたら認知した子が出てきた」というケースもあります。こうした父が認知した子(非嫡出子)にも、平等な相続権があります。

 

 4 父の子は父の戸籍を出生までさかのぼり確認する 

上記①~⑦のような相続人は、父の戸籍を出生までさかのぼって確認することになります。

戸籍の集め方の詳細は相続人調査の記事をご参照ください。
相続人調査

 

 5 平等に分けることはできない土地建物は遺言か生前贈与で対策をしておく 

上記①~⑦の子や孫(実家を継いでいる長男から見ると兄弟姉妹や甥姪)は、法律上は平等な相続権を持ちます。

しかし、土地建物は、経済的に考えて、切り分けて平等に分配するわけにはいきませんし、法定相続分に応じて共有で相続することもお勧めできません。

土地建物の相続については、揉めないために、遺言又は生前贈与により対策しておくことが不可欠です。

今回は数年前に、長男からのお声がけにより父の納得を得たうえで生前贈与を済ませており、事なきを得ました。

しかし、音信のない認知した子がいるのに、土地建物について、遺言書も作成せず、生前贈与もしていなかった場合は、次の通りとなります。

連絡がとれない理由が、「関係が険悪」ということであれば、遺産分割調停(裁判)で解決する。

連絡がとれない理由が、「音信不通」であれば、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任申立をする。

いずれにしても、原則的には、異母兄弟又は不在者財産管理人に分配するするお金を用意する必要があります。

こうした手続きには、時間もお金もストレスもかかるので、必ず遺言や生前贈与で対策しておきたいものです。
公正証書遺言
生前贈与

 

 6 疎遠な異母兄弟姉妹は3か月以内であれば相続放棄という選択肢もある 

長男の立場からすれば、異母兄弟と「連絡がとれるか」「同意が得られるか」という点が問題ですが、認知された異母兄弟の側からすれば、「相続権を主張するか」「3か月以内に相続放棄するか」という点が問題です。

いずれにしても、相続の連絡を受け取ったら速やかに行動することが大切です。

相続放棄

 

 7 預貯金は同意が得られなくても法定相続分に応じて相続できる 

土地建物と異なり、預貯金は幸いなことに1円単位まで分けられる財産です。
したがって、相続人全員の合意が成立しないときでも、法定相続分に応じた預貯金を払い出すことが可能です。

 

 8 死亡保険金は相続財産ではないので「受取人」が単独で受け取ることができる 

死亡保険金は、相続人の合意とは関係なく、保険契約上の受取人に支給されるお金です。

したがって、受取人として誰が記載されているかが重要です。

受取人に特定の誰かが記載されていれば、その人が単独で保険金を受け取ります。

受取人に「法定相続人」と記載されているケースもあります。今回がこのケースでした。

保険金は、相続トラブルとは無縁のお金を妻や特定の子に与えるために用意するものですから、受取人を「法定相続人」とする保険契約の締結は対策不足と言わざるを得ません。

したがって、保険証券に、受取人が「法定相続人」と記載されている場合は、今すぐ受取人の見直しをすべきでしょう。

しかし、事例のように父の生前に保険金の受取人の不備に気づかなかった場合は、基本的に預貯金と同様に考えていただいて構いません。

つまり、保険金もお金ですから法定相続人全員の合意が得られないときであっても各相続人が法定相続分に応じて保険金を受け取ることができるのです。

 

 9 まとめ 

①相続には相続人全員の合意が必要

②生前に戸籍を取得して相続人を洗い出しておくことが望ましい

③預貯金は合意が得られなくても法定相続分に応じて相続できる

④死亡保険金の受取人の記載はいますぐ確認し必要に応じて変更する

⑤土地建物については必ず遺言・生前贈与等により生前対策しておく

 

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