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コラム

行方不明の弟の財産を失踪宣告により相続する

2020年10月25日相続
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独身の弟が行方不明になって(失踪して)7年が経過しました。失踪宣告により弟の財産を相続、清算するにはどのような手続きが必要でしょうか?弟には、土地建物、団体信用生命保険、死亡保険金、預貯金、有価証券といった財産と住宅ローンがあります。

 1 結論 

①できれば失踪時に家庭裁判所で不在者財産管理人を選任しておく
②失踪から7年経過後に家庭裁判所に失踪宣告の申立てをする
③失踪宣告が確定するまでには6か月ほどかかる
④失踪宣告が確定すると行方不明の弟は死亡したものとみなされる
⑤行方不明の弟名義の遺産につき相続手続きをする

 

 2 失踪時に家庭裁判所で不在者財産管理人を選任しておく 

失踪宣告の条件は、「不在者の生存が証明された最後の時から7年間経過すること」です。つまり「不在者の生存が証明された最後の時=失踪した日」がいつなのかが問題となります。

失踪から年月が経過すると失踪した日の証明が困難となりがちです。

また、不在者が土地建物を保有しており、固定資産税や住宅ローンの支払いがある場合などは、引落口座の管理等が必要となってきます。こういった管理も、親族だからといって当然にできる訳ではありません。

こういった失踪時期の証明や財産管理のために、失踪したことが判明した段階で、司法書士か弁護士に相談し、家庭裁判所に、不在者財産管理人の選任申立をしておくべきでしょう。

申立て後、家庭裁判所での調査(警察、運転免許センター、ハローワーク等への照会等)の結果、不在の事実が確定すると、不在者財産管理人が選任されます。

不在者財産管理人は不在者の代理人として財産を維持管理し、毎年、家庭裁判所に定期報告をします。

 3 失踪から7年経過後に家庭裁判所に失踪宣告の申立てをする 

3-1 失踪宣告は長期間行方不明の親族等を死亡したものとみなす制度

失踪宣告は、長年行方不明となっている親族等(不在者)の財産・債務を清算するために、その親族等を死亡したものとみなし、相続手続きを開始させる制度です(普通失踪、民法30条1項)。

3-2 失踪宣告の3条件

失踪宣告(普通失踪宣告)をするためには3つの条件が必要です。

①不在者の生死が明らかでないこと
消息がなく、生存の証明も、死亡の証明もできないことです。

②不在者の生存が証明された最後の時から7年間経過すること
家出して生死不明であれば家出の日から7年間経過することです。

③利害関係人から請求があること
利害関係人とは、推定相続人、不在者財産管理人等のことです。

 4 失踪宣告の申立てから戸籍への記載までに6か月ほどかかる 

失踪宣告の申立から戸籍への記載までの手続は以下の①~⑥の通りです。
おおむね6か月ほどかかります。

①不在者の住所地の家庭裁判所に失踪宣告申立書を提出

司法書士か弁護士に相談して、家庭裁判所に失踪宣告の申立てをします。

②家庭裁判所による調査

③官報公告(3カ月間以上)

④失踪宣告→確定→戸籍通知

⑤官報公告(失踪宣告の審判確定の旨)

⑥戸籍届出

失踪宣告の審判確定から10日以内に審判書・確定証明書を提出して失踪届を提出します。

 5 失踪宣告後の相続手続 

失踪宣告の審判が確定すると不在者は死亡したものとみなされ、不在者名義の土地建物や預貯金について相続が開始します。

また、不在者を被保険者とする生命保険や団体信用生命保険がある場合は、保険金の請求手続きをすることになります。

以下、失踪宣告後の相続手続について、時系列的に概説します。

5-1 戸籍調査

通常の相続と同様に、戸籍調査をします。

・不在者の戸籍を出生までさかのぼります。
・不在者に子がいない場合は、不在者の両親の戸籍も出生までさかのぼります。
・相続人となる不在者の兄弟姉妹全員の戸籍と戸籍の附票を取得します。
・以上の戸籍に基づき法務局で法定相続情報証明書を取得します。

相続人調査

5-2 死亡保険金、団体信用生命保険金の請求

失踪宣告は不在者が法律上死亡したとする制度ですから、通常の死亡と同様に死亡保険金を請求できるのが原則です。

→参照:公益財団法人 生命保険文化センター
→参照:兵庫県弁護士会

5-3 遺産調査

通常の相続と同様に遺産調査をします。

・土地建物は、税務課で評価証明書を取得し、登記情報で詳細を確認します。
・預貯金は、取扱店で全店照会、残高証明書等を取得します。
・有価証券は、取扱店で全店照会、残高証明書等を取得します。
・場合によっては証券保管振替機構で不在者の有価証券を調査します。

遺産調査

5-4 遺産分割

通常の相続と同様に遺産分割をします。

専門家が作成した財産目録に基づき、誰が、土地建物、預貯金、有価証券を相続するのかを決めます。

相続人全員が納得のうえであれば、代表相続人が、いったんは全財産を相続したうえで、代償金を分配するという分割協議が効率的でしょう。

遺産分割協議書

5-5 土地建物の名義変更(相続登記)

土地建物については、遺産分割協議書に基づき、相続人への名義変更(相続登記)をします。

相続登記

土地建物について売却が確定している場合は、換価分割を目的とした遺産分割協議書を作成し、代表相続人への名義変更をしたうえで売却し、仲介手数料、確定測量費用、登記費用を差し引いた利益を各相続人に分配します。この場合は、翌年、各相続人は確定申告が必要です。

遺産分割協議書

5-6 預貯金の解約

預貯金については、遺産分割協議書に記載された相続人が解約手続きをし、他の相続人への代償金を定めた場合は代償金を支払います。

預貯金の相続

5-7 有価証券の名義変更

上場株式、投資信託などの有価証券については、遺産分割協議書に記載された相続人が一旦は名義変更の手続きをします。証券口座を持っていない場合は、証券口座の開設が必要となります。

上場株式・投資信託の相続

 6 不在者財産管理人の管理終了届 

不在者財産管理人は、失踪宣告が確定し、不在者名義の財産すべての相続手続きが完了すると、管理すべき財産がなくなるので、家庭裁判所へ管理終了届を提出します。同時に不在者財産管理人の管理処分取消申立書も提出します。

 7 まとめ 

①親族等が失踪した場合は家庭裁判所で不在者財産管理人を選任する
②失踪から7年経過した場合には家庭裁判所に失踪宣告の申立てをする
③失踪宣告は申立から確定するまでに6か月ほどかかる
④失踪宣告が確定すると行方不明の弟は死亡したものとみなされる
⑤行方不明の弟名義の遺産につき相続手続きをする

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