〈2021年解決事例〉
(※プライバシーへの配慮から編集を施しております)
相談内容…長男が行方不明になってしまった
岐阜県各務原市在住の80代男性です。
県外で暮らしていた長男が2年ほど前に行方不明となってしまいました。
1年前に警察に行方不明者届をしましたが、長男の消息はいまだ不明のままです。
長男は30年前に結婚し二人の子どもに恵まれ、その子どもたち(私にとっては孫)も成人しています。
しかし5年ほど前から外国籍の女性の方と交際・不倫するようになり、これが原因で妻子に家を出ていかれ、3年前に離婚に至りました。
その後しばらくして長男は行方不明となってしまい、長男一家が住んでいた自宅は2年間空き家状態です。
住宅の名義は長男ですが、現状わたしが固定資産税を立て替えるなど管理をしています。
長男の消息が心配なのはもちろんですが、それとは別に、空家をこのまま放置することはできず、できれば速やかに売却したいと考えています。
どうしたらよいでしょうか。

失踪した家族の財産管理ははどうする?
家族が失踪して消息がとれなくなってしまった場合、心配や不安な気持ちが先立つ一方で、土地建物や車といった財産の管理の問題も次第に顕在化します。
行方不明だからといって、家族が本人の財産を勝手に処分することはできないからです。

失踪した家族の財産を管理処分するためには、家庭裁判所で不在者財産管理人を選任することが不可欠です。
警察への行方不明者届(失踪届)
家族が失踪・行方不明になってしまった場合は、速やかに家族の住所地を管轄する警察署に行方不明者届を提出しましょう。
持ち物は、届をする家族の免許証等の身分証明書と認印です。
行方不明者届が受理された後は、警察が事件性や緊急性の程度を検討し、適宜の対応を取ります。
司法書士への相談
行方不明者になって数か月が過ぎると、次第に財産管理の問題が顕在化してきます。
空家となった住宅の防犯上の問題、住宅の経年劣化、固定資産税の支払い、水道光熱費の負担、土地の草刈りなどです。
戻って来る見通しがつかない場合は、住宅を処分したいところですが、家族であるとはいえ、本人ではない以上、権限がありません。
このような場合には、司法書士又は弁護士に相談して、家庭裁判所で不在者財産管理人の選任手続を依頼します。
不在者財産管理人選任手続の主な条件は3つです。
- 申立権者は、不在者の利害関係人又は検察官であること
- 行方不明であること
- 管理すべき財産があること
(1)については、お父様は固定資産税を立て替えており、債権者としての立場で申し立てが認められます。
以下では、(2)(3)について説明します。
行方不明を証明する資料
長男様が行方不明であることは、次の順番で証明します。
- 警察への行方不明者届
- 住民票、戸籍の附票等の住所証明書
- 宛所不明で返送された配達証明郵便
- 不在籍不在住証明書
今回は1.の行方不明届と2.の住民票(職権消除の記載あり)により証明しました。
②の住民票に、失踪から1年ほど経過した頃の日付で職権消除の記載がりましたので、これで行方不明としての証明としては足りることになります。
住民票に職権消除の記載がないときは、③④の資料により補完することとなります。
管理すべき財産の資料
今回管理すべき財産として判明しているのは、建物と銀行預金数万円です。建物については、市役所税務課で固定資産評価証明書、法務局で登記事項証明書を取得します。
銀行預金については通帳コピーを取得します。
家庭裁判所への申し立てと調査
以上の通り、行方不明を証明する資料と管理すべき財産の資料が揃ったら、司法書士が不在者財産管理人選任申立書を作成して、家庭裁判所に提出します。 (提出先:不在者の最後の住所地の管轄裁判所)
家庭裁判所では、申し立て後、不在の事実調査を行います。
検察庁、警察本部のほか、必要に応じて入国管理局、外務省、法務局などを通じて調査します。
不在者財産管理人の選任と今後の手続き
家庭裁判所での不在の調査完了後、不在者財産管理人が選任されます。
管理人候補者としては、書類作成人の司法書士を記載しましたが、管理人を弁護士に制限している都道府県の家庭裁判所においては、裁判所指定の弁護士が選任される扱いです。
今回は弁護士が管理人として選任されることとなりました。
不在者財産管理人選任後の手続きの流れ
- 不在者財産管理人が財産目録作成・財産管理
- 土地名義人であるお父様と共同で管理対象財産である建物を売却、税務署への届出、以後は銀行預金のみ管理→必要に応じ、また将来の相続も踏まえ適切と判断すれば供託(令和5年4月1日施行、家事事件手続法146条の2)
- 毎年、住民票調査のうえ、財産の管理状況を家庭裁判所に報告
- 行方不明から7年経過後は、家族の希望を聞きつつ失踪宣告
- 失踪宣告により相続開始、長男様の二人の子に相続通知
- 長男様の二人の子が相続放棄した場合は、親が健在であれば親が相続し、両親とも他界していた場合は、弟である二男が相続
残った心配事を解決
不在者財産管理人の選任により、長男様の財産管理の心配はなくなりましたが、あと2つ財産的な心配事が残っています。
一つ目は上記⑥の長男が期限である7年を過ぎても見つからず、長男へ失踪宣告がなされた場合の相続手続のことです。
これについては現段階でできることはなく、長男の二人の子の将来の判断に任せるしかありません。
二つ目の心配事は、将来的に起こる相談者様及び奥様の相続です。

何も対策しないと、残された家族は「長男の不在者財産管理人」又は「疎遠になった長男の二人の子(長男の失踪宣告後)」を交えて遺産分割協議をするという煩雑なこととなります。
このような事態を避けるために有効なのが遺言書です。
遺言書があれば、残された家族がスムーズに相続手続きを行うことができます。
そのため、相談者さまと奥様お二方に全財産を二男へ相続させる旨の自筆証書遺言を作成していただき、万一遺留分が請求された場合は、法定相続分の半額に相当する金銭で解決できるように備えました。
概算費用
| 項目 | 報酬 | 実費 |
|---|---|---|
| 不在者財産管理人選任申立書 | 120,000 | 800 |
| 裁判所提出郵券 | 3,140 | |
| 評価証明書 | 2,500 | 200 |
| 登記事項証明書 | 1,000 | |
| 戸籍住民票代行取得×5 | 12,500 | 1,600 |
| 予納金(管理人報酬用) | 200,000 | |
| 小計 | 135,000 | 206,740 |
| 消費税 | 13,500 | |
| 合計請求額 | 355,240 | |
まとめ
身近な家族が失踪することなど想定外の事態ではありますが、そのような場合にも適切に対処できる法的手続きが準備されています。
身近な家族・親族が失踪・行方不明になって困ったら、司法書士か弁護士に相談して、不在者財産管理人を選任して、財産管理のお悩みを解決しましょう。

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