解決事例Solution Cases

【争族を避けるための終活】ステップファミリー 妻に全財産を残したい 財産の終活を考える

【争族を避けるための終活】 ステップファミリー 妻に全財産を残したい 財産の就活を考える 遺言

〈2021 年解決事例〉
(※プライバシーへの配慮から編集を施しております)

人生も終盤、希望通りの相続のためにどんな準備をすればよい?

誰にも訪れる人生の終盤。残される家族のためにも、できればスムーズに閉じていきたいですよね。

断捨離、エンディングノートの作成、どんな葬儀にするか、お墓はどうするか・・・
一口に「終活」といってもやることが意外と沢山あり、手始めにどんなことをすればよいのか、迷う方も多いとおもいます。

そんな時に参考になるサイトをご紹介いたします。いろいろな終活について詳しく紹介されていますよ。

この記事では、司法書士という専門家の立場から、財産の終活について詳しくご紹介していきます。
ぜひ御覧ください。

相談内容….妻に全財産を相続したい。どんな方法がある?

80代の男性です。
わたしは離婚歴があり、前妻の間に50代の娘がいますが、現在は疎遠になっています。

前妻と離婚した際に娘の親権をわたしが取り、男手一つで育ててきました。
その後、娘が中学生の頃に今の妻と再婚し、妻と娘は養子縁組を行いました。
以来四十数年間、3人で平穏に暮らしてきたのですが、7年前から仕事の関係で娘は他県で離れて暮らすようになりました。

わたしは昨年、脳梗塞を患い、回復はしたものの今後の体調と生活に不安を感じています。
そんな折、突然娘から連絡が入り、わたしたち夫婦と親子の縁を切りたい、家を引き継ぐつもりはない、と宣言されました。
その後間もなく、娘と妻との離縁の届け出をすることになりました。

それ以来、残念ながら娘と連絡はつきません。
そのため、将来の相続で妻を苦労させないために、財産の終活をしておきたいと思います。
財産は、自宅の土地建物と銀行預金です。すべてを妻に相続させたいと考えています。

どのような対策をすれば、妻が全財産を相続することができますか?

相続関係図 娘が疎遠に

ご自身の人生の終盤、どのような準備をすれば残される家族が穏便に過ごせるでしょうか?
今回は『終活』について考えていきましょう。

4つの『財産の終活』メニュー、どれを選ぶのが最適?

当事務所が主に取り扱う財産の終活メニューの種類は、①遺言書、②生前贈与、③家族信託、④任意後見の4つです。

このほか、養子縁組、生命保険、エンディングノートの作成も、財産の終活になり得ます。

相続(争族)による資産凍結の予防効果、認知症による資産凍結の予防効果、それぞれのコストや難易度を考慮して、ご自身にとって最適な財産の終活を選択していきましょう。

それでは4つの財産の終活メニューについて、箇条書きで確認していきましょう。

①遺言書:ご自身の将来の遺産分けの方法を文書化

相続(争族)による資産凍結

防効果がある。相続の際、ご家族・ご親族の話し合いを省略して遺産の名義変更を行える。

認知症による資産凍結

予防効果がない

コスト

安く抑えることが出来る

難易度

専門家に任せれば短期間でできる

②生前贈与:ご自身の財産をいますぐに名義変更

相続(争族)による資産凍結

予防効果がある

認知症による資産凍結

予防効果がある

コスト

配偶者や子・孫に対しては贈与税の特例があるが登録免許税・不動産取得税が高い。

難易度

専門家に任せれば短期間でできる

③家族信託:ご自身の財産の管理運用をご家族に任せる

相続(争族)による資産凍結

予防効果がある。ご自身の相続のときに、信託契約に基づき遺産の名義変更を行える。

認知症による資産凍結

予防効果がある

コスト

専門家手数料が高くなる

難易度

専門家に任せても2カ月~6か月ほどかかる。信託口座の開設が必要

④任意後見:ご自身の判断能力低下に備え将来の後見人予定者を決めておく

相続(争族)による資産凍結

予防効果はない。別途、遺言書・生前贈与・家族信託をする必要がある

認知症による資産凍結

予防効果がある

コスト

安く抑えることが出来る

難易度

将来判断能力が低下したときに家庭裁判所への申し立て手続きが必要。

以上を踏まえて、改めて今回のご依頼を整理してみましょう。

  • 主な目的は相続(争族)による資産凍結の予防
  • 不動産は自宅のみであるため、認知症による資産凍結予防の優先順位は相対的に低い
  • 80代で脳梗塞を患っていることから緊急性がある
  • 金融資産の日々の入出金は便宜奥様において可能

資産凍結の予防ができ、認知症対策はそれほど必要なく、緊急性があり短期間で対応できる、この三点を抑えているのは①遺言公正証書です。

そこで今回は遺言公正証書の作成による財産の終活を選択いたします。

遺言公正証書作成の時の注意点

遺言書を作成するとして、ご自身の財産をどのように引き継がせたいかを決めなければなりません。
今回の相談者様は、全財産を妻に相続させたいとのことでした。

疎遠になってしまった一人娘のことを無碍にするわけではないですが、娘様も思うところがあって親子の縁を切りたいとお申し出になられていると考えられ、財産の引継先としては妻のみでよいと考えたわけです。

また、相続発生時には奥様お一人で手続きができるように遺言執行者は妻としておきます。

遺留分について

全財産を妻に相続させるという遺言書を書いたとしても、長女様には法定相続分の2分の1に相当する遺留分が認められます。

遺留分とは、遺言書、生前贈与、家族信託などにより、遺産の取り分が少なくなる配偶者や子に認められる遺産の最低保証額です。

今回、法定相続人は妻と長女のお二人で、法定相続分は2分の1ずつです。
長女の遺留分は法定相続分である2分の1の2分の1ですので、遺産の4分の1となります。

娘様の遺留分=法定相続分2分の1×2分の1
=4分の1
≒1550 万円

将来の相続手続の際には、長女に遺言書の内容(全財産を妻に相続させる)を手紙で知らせます。
長女は手紙を受け取ってから1年間はご希望により遺留分に相当するお金を妻(母)に請求することが出来ます。

長女は「遺産を後妻が相続することはわかりましたが、私には遺産の4分の1に相当する遺留分があるので、お金で支払ってください」と言うことが出来るのです。

妻の立場からすると、1年以内に長女から申し出があった場合に応じればよいので、長女から申し出がなければそのまま全財産を相続することとなります。

予備的受遺者の定めは必要か?

遺言書を作成するときには、遺産を引き継いで欲しいと持った人が先に亡くなることも想定して、予備的受遺者を記載するのが基本です。

例えば、次の通りです。

「自宅を妻に相続させる。妻が先に亡くなったときは長男に相続させる」
「○○の土地を長女に相続させる。長女が先に亡くなったときは長女の子に相続させる」

しかし今回は、次の理由により予備的受遺者の記載はしませんでした。

  • 目的が、将来の遺産相続時の妻への負担軽減にあることから、妻が先に亡くなった場合に備える必要性に乏しい
  • 妻が先に亡くなった場合の相続人は長女お一人であり、長女が相続するか相続放棄するかの二択になる
  • 妻亡きあとに長女より優先すべき予備的受遺者がいない

当事務所での遺言公正証書作成の流れ

お問合せ・必要書類案内

お問合せ時に、5~10分ほどお時間をいただいて、ご相談内容の聴き取りと必要書類の案内をさせて頂きます。

初回面談・概算費用見積・スケジュール案内

初回面談時に、手続内容・概算費用・スケジュールをご案内させて頂き、ご検討いただきます。

【初回面談時の必要書類】

  • 相談者様の出生から現在までの連続全戸籍、印鑑証明書(最寄りの市役所本庁舎で取得)
  • 固定資産税の納付書(4月にご自宅に届く)又は固定資産評価証明書(市役所税務課)
  • 通帳

遺言文案作成・日程調整

ご依頼を頂きましたら、遺言書文案を作成し、ご相談者様にご確認いただいたうえで、公証人と文案・遺言作成の日程・費用について調整します。

遺言公正証書作成

遺言作成日に、お近くの公証役場にて公証人・司法書士・証人の立会の元、遺言書文案の内容を精査・ご本人確認を行い、正式に遺言書の作成をします。

高齢やご病気などの理由により、公証役場までお越しいただくことが難しい場合は、ご自宅に公証人・司法書士・証人の3名が出張し、遺言書を作成することもできます。(※別途出張料がかかります)

公証人が遺言者に口頭で遺言の内容を確認したうえで、読み聞かせをし、間違いがなければ、遺言者、証人、公証人の順番で署名押印し、遺言書の出来上がりです。

この遺言公正証書が、相続人全員一致の話し合いを省略できるという絶大な効果を発揮するのです。

遺言書がないばかりに、深刻な遺産相続トラブルに発展し、お互いストレスにさらされ、時間とお金を浪費するケースが後を絶ちません。

残された家族がスムーズに相続できるよう、遺言公正証書の作成を強くおすすめします。

将来の遺言書による相続手続

今回の場合は遺言公正証書があるため、相続手続は奥様お一人で進めることが出来ます。


土地の名義変更・相続登記は司法書士に依頼し、預貯金はご自身で解約していただくのが基本です。
すべて司法書士にお任せしたい場合は、司法書士が預金解約も含め代行します。

注意すべき点として、長女には遺言と遺産の内容を手紙で知らせ、遺留分請求の機会を与えることです。
1年以内に長女から遺留分の請求があったときは、金銭で精算します。

トラブル防止のため、合意書を作成し、計算書と各種明細コピーを同封しておくべきでしょう。

概算費用(自宅1200万円/金融資産5000万円/推定相続人2名)

項目報酬実費
事前登記情報×2
662
遺言書文案作成・証人①155,000
公証人手数料
57,000
公証人出張費用・交通費
18,000
証人②
7,000
小計155,00082,662
消費税15,500
合計請求額¥253,162

まとめ

財産の終活といえば、遺言書が基本となります。

そのうえで、コストをかけてでも生前に財産の完全な所有権を移転しておきたい場合は生前贈与、生前の財産管理から相続による資産承継までキチンと対策したい場合には、家族信託と任意後見の組み合わせが最適です。

当事務所は、
①円満相続については効率よい手続
②疎遠・複雑な相続については出来る限りの対処療法
③資産の凍結を防ぎたい・相続トラブルを予防したいご家族には家族信託・遺言・生前贈与などの生前対策
ご提案・ご提供することにより、皆様の安心・円満な相続と有効な資産の利活用にお役立ちすることを使命としております。

ご相談・ご依頼を心よりお待ち申し上げております。