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【番外編】色々な生前対策を解説 家族信託、生前贈与、養子縁組などの場合

【番外編】色々な生前対策を解説 家族信託、生前贈与、養子縁組などの場合 お知らせ

〈2021 年解決事例〉
(※プライバシーへの配慮から編集を施しております)

色々な生前対策

前回の記事で、生前対策として主に3つ「遺言、家族信託、生前贈与」があるとお話させていただきました。

前回のケースでは「公正証書遺言」を選択しましたが、今回は番外編として、残りの2つを選択した場合の解説をしていきます。

相談内容の概要

相談者(祖母)は離婚した長男と長年同居しおり、自宅も土地も長男に相続してもらう予定だったが、突然次男が出戻りなし崩し的に次男も同居することになった。

自宅の隣には相談者と長男の共有名義の土地に孫娘夫婦の家(孫娘の夫名義)も建っている。

このまま行くと将来相談者の相続が発生した際に、次男が相続を希望する可能性があり、不安だ。
当初の希望通り長男、もしくは孫娘が相続できるように生前対策を行いたい

叔父が突然同居する相続関係図

祖母名義の財産
自宅・孫娘様の敷地(祖母と長男の共有名義)
田畑・山林などの不動産
合わせて固定資産評価額で7000万円、相続税評価額で概算8500万円

預貯金は3000万円

生前対策の比較表(金額は概算)

最初に、生前対策なしの場合と、3つの生前対策「遺言、家族信託、生前贈与」のどれかを行った場合の比較表をご覧ください。

比較表

「家族信託をした場合」の相続等の見通し

生前対策【家族信託契約】の手続き

家族信託の手続きは、戸籍調査、財産調査、財産の管理・承継プランの文書化の3段階です。
ポイントは、財産の管理・承継プランの文書化です。

家族信託は、遺言書と比べて、次の3点で異なります。

  • ◎認知症対策としての財産管理に活用できる
  • △遺言書より精密さが要求される
  • △特に受益者連続型信託において、遺留分を侵害するプランとなる場合は家族の円満が要求される

今回の事例では家族信託を選択した場合、遺留分を侵害するプランとなりやすく、かつ、将来の相続時の円満が保証されない状況にあります。

家族信託は遺留分を請求されると、家族信託の長期プランが計画倒れとなる傾向がありますので、今回のケースでは家族信託の採用について消極としておきます。

家族信託がある相続の手続

家族信託がある相続(受益者変更又は帰属権利者への帰属)の手続は、戸籍収集・遺産調査・信託財産の名義変更(受益者変更又は帰属権利者への帰属)、相続税申告の4段階です。

遺言と同様に遺産分割協議が不要なのが大きなポイントです。

家族信託で生前対策した相続で揉める金額

家族信託で生前対策した相続で揉める金額は、遺留分です。
本件の場合、次男の遺留分は遺産額の25%、概算2875万円です。

遺言と同様に、生前対策した結果将来の相続の上振れリスクが半減することになります。

家族信託で生前対策した相続の難易度

不動産の家族信託は、生前対策の中では最も難易度が高いといえます。
信託する財産について、想定外の事態を最小化するためのプランを設計する必要があるためです。

家族信託による相続時の財産承継の難易度は、生前対策がない場合に比べて大幅に軽減されます。
家族信託があることにより、遺産分割協議が不要となるからです。

家族信託による生前対策・信託財産承継の費用

家族信託による生前対策・信託財産承継の費用は、概算582万円~3457万円です。
事例では98万円の生前対策費用により、将来の相続リスクを半減させることが出来ます。

「生前贈与をした場合」の相続等の見通し

生前対策【生前贈与】の手続き

生前贈与の手続きは、戸籍調査、財産調査、生前贈与契約、税務申告の4段階です。
ポイントは、後述する費用です。

生前贈与は、遺言書・家族信託と比べて、次の点で異なります。

  • ◎生前に所有権が親から子に完全に移転する
  • ◎認知症対策として万能(制限がない)
  • ◎手続きが簡単
  • ×不動産取得税が3%課税される
  • ×登録免許税が5倍課税される
  • △2500万円を超える額については、生前に20%の贈与税を納税して、相続時に還付を受ける

事例では60%割高となる費用のことを度外視した上で、親が財産に関して引退する意思があれば、もっとも優れた生前対策といえるでしょう。

生前贈与がある相続の手続

主要な財産は生前贈与済みで、相続手続は不要です。
残余財産については相続手続が必要で、遺言書を作成しておくとよいでしょう。

生前贈与で生前対策した相続で揉める金額

生前贈与で生前対策した相続で揉める金額は、遺留分です。
次男の遺留分は遺産額の25%、概算2875万円です。

生前贈与で生前対策した相続の難易度

生前贈与は、生前対策の中では最も難易度が低いといえます。
生前贈与後の相続手続の難易度も、主要な財産は移転済みですので、最も難易度が低いといえるでしょう。
生前に治めた相続税の精算(還付)手続きが必要です。

生前贈与による生前対策・相続手続の費用

生前贈与による生前対策・相続手続の費用は、概算833万円~3708万円です。

その他の生前対策【養子縁組】

ご家族の状況によっては、孫や子の配偶者などと養子縁組をすることもお勧めです。
養子縁組は遺留分対策・相続税対策になります。

養子縁組の遺留分対策効果

遺留分を侵害する生前対策をせざるを得ない場合において、将来の円満な相続が約束されないときは、資産を承継させたい子の家族を養子にして、請求される遺留分の額を抑えることができます。

今回のケースの場合、隣に住んでいる孫娘や孫娘の夫と養子縁組することで、対策することができます。

養子縁組の相続税の節税効果

原則として、相続税の基礎控除額算定において、非課税枠が600万円拡大し、相続税の節税につながります。

その他の生前対策【一時払い終身保険】

親の健康状態・ご年齢・預貯金の状況によっては、一時払い終身保険も、お勧めです。
一時払い終身保険の効果も、遺留分対策・相続税対策です。

一時払い終身保険の遺留分対策効果

死亡保険金は、原則として、遺留分算定の基礎財産から除外されるため、遺留分対策となります。

一時払い終身保険の相続税の節税効果

原則として、相続税の基礎控除額算定において、非課税枠が相続人一人当たり500万円拡大するので、相続税の節税につながります。

まとめ

いかがでしたか?一口に「生前対策」と言っても、色々な方法があります。
どの生前対策もそれぞれにメリット、デメリットがあり、ご家族や財産の状況によって、最適解が異なります。
当事務所ではお客様の状況を加味したうえで、一番効果的なものをご提案させていただいております。迷ったら一度ご相談にいらしてください。

当事務所は、
①円満相続については効率よい手続
②疎遠・複雑な相続については出来る限りの対処療法
③資産の凍結を防ぎたい・相続トラブルを予防したいご家族には家族信託・遺言・生前贈与などの生前対策
ご提案・ご提供することにより、皆様の安心・円満な相続と有効な資産の利活用にお役立ちすることを使命としております。

ご相談・ご依頼を心よりお待ち申し上げております。