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【子どものいない夫婦の相続】住民票消除の異母兄がいた 失踪宣告をして遺産分割した事例

子どものいない夫婦の相続 住民票消除の異母兄がいた 失踪宣告をして遺産分割した事例 相続

〈2017~2018 年解決事例〉
(※プライバシーへの配慮から編集を施しております)

相談内容…戸籍調査で突然判明、消息不明の異母兄

岐阜県各務原市在住の女性からの相談です。

先日夫に先立たれました。夫の遺産は、自宅 1100 万円と預貯金 500 万円です。
わたしは住み慣れた自宅をそのまま相続したいと考えています。

相続人は妻である私と夫側の兄弟姉妹4名の合計5名のはずでした。
ところが戸籍調査をしてみると、夫には異母兄がいたことが判明したのです。
生前、夫からそのような話は聞いたことがなく、寝耳に水で大変驚きました。

住民票消除の異母兄が発覚した相続関係図

異母兄の最後の住所は関東で、戸籍の附票には昭和30年代に住民票職権消除(※転出や死亡などで住民票から消えること)の記載がありました。

異母兄本人による最後の消息は、昭和20年に養親と養子縁組した戸籍上の記載です。
異母兄の養親はともに昭和40年代に死亡していますが、異母兄は養親の死亡届出人として記載されていませんでした。
その後の行方は追うことができず、現在の生死も不明です。

突然発覚した夫の異母兄の存在に困惑しています。
異母兄と連絡がつかないなかで、遺産分割協議・相続手続をどのように進めれば

よいでしょうか?

実際の解決方法…異母兄の失踪宣告手続きを行い、遺産分割する

1,連絡の取れる夫の姉妹に意向を確認する

最初に、連絡の取れる夫の姉妹に相続通知書を送付し、遺産分割協議についてのご意向の回答をもらいます。
夫側の姉妹が取れる選択肢は、次の3つです。

  1. 法定相続分に相当する金銭の支払いを求める
  2. 遺産分割証明書にサインすることにより遺産を放棄する
  3. 家庭裁判所に相続放棄申述書を提出する

4名中3名がⒶの法定相続分を主張し、1名がⒷの取り分のない遺産分割証明書にサインすることで内諾を得ました。

その際に、連絡のつかない所在不明の異母兄が見つかったこと、異母兄の失踪宣告の手続の見通しと半年ほどの期間を要する旨を伝えておきます。

2,戸籍上の異母兄に手紙を郵送する

夫の異母兄は、住民票が職権消除されているため、実際の所在も生死も不明です。
異母兄の所在不明を疎明する資料の一つとして、行政上の最後の住所宛に手紙を出し、郵便不到達の記録を残します。

疎明(そめい)とは、簡易な証明のこと

3,関東の家庭裁判所に失踪宣告を申し立てる

異母兄の最後の住所地である関東の家庭裁判所に失踪宣告を申し立てます。

失踪宣告は、日本の法律・戸籍制度の枠内で死亡したものと

みなす、私法上の制度です。

4,家庭裁判所調査官による調査

家庭裁判所では、運転免許センター、警察本部、ハローワークなどに照会をかけ、異母兄の記録を探索します。


すると異母兄と同性・同名(漢字違い)・同生年月日の人物の記録が見つかったので、家庭裁判所の指示により、戸籍調査をしました。
戸籍から異母兄とは別人物であることが判明し、失踪宣告の方向で進めることになります。

5,申立事情説明書の提出

家庭裁判所から申立人による申立事情説明書の提出を求められたので、ご相談者様にご記入いただき郵送します。

6,家庭裁判所による官報公告(3ヶ月以上)

失踪公告料金の 4,298 円を申立人名義で予納し、家庭裁判所が失踪公告をして、住民票消除されている夫の異母兄に申し出る機会を与えます。

官報=国の新聞

官報には、相続人不存在の公告の他に、法律等の公布、会社の解散公告・合併公告、破産の公告などがあります。
官報を実際に閲覧するのは、金融機関や士業などのごく限られた人のみです。

7,失踪宣告の審判・確定・確定証明書の交付

公告期間が満了すると、家庭裁判所は失踪宣告をします。
死亡したものとみなされるのは、最終の音信から7年間の満了日です。
夫の異母兄の最後の音信は、養親と養子縁組した昭和20年の日付のため、7年後の昭和27年に死亡したものとみなされました。
審判は14日後に確定するので確定証明書を取得します。

失踪宣告の申立時点で失踪から7年以上経過していれば、失踪宣告に

よるみなし死亡までの所要期間は、最短5か月(公告3か月+確定2

週間+戸籍反映1週間+その他3週間)ほどです。

8,戸籍の届出

失踪宣告審判書と確定証明書を、異母兄の本籍地の役場に郵送し、失踪届をします。

9,夫の異母兄の戸籍を再取得

審判確定から1週間ほどで失踪宣告による死亡の事実が戸籍に反映されるので、異母兄の死亡が記載された除籍謄本を取得します。

10,夫の姉妹へ遺産分割証明書を送付

失踪宣告確定後、夫の姉妹に遺産分割証明書を送付し、印鑑証明書を同封して返送頂きます。

遺産分割協議書=一枚の書類に全員がサインする

遺産分割証明書=別々の書類に各自がサインする

遺産分割証明書がすべて返送され、全財産を妻が取得する代わりに、夫の姉妹4名中3名(1名は取り分辞退)に法定相続分に相当する代償金を支払う遺産分割協議が成立しました。

分割する遺産は自宅 1100万円と預貯金500万円の合計1600万円
子どもがいない夫婦で配偶者と故人の兄弟姉妹が相続人になる場合、法定相続分は配偶者が3/4、残りの1/4を兄弟姉妹で分けます

¥16,000,000×1/4×1/4=¥1,000,000
3名に対して100万円ずつの代償金を支払う。

不動産の相続登記、法定相続情報の取得

無事に遺産分割が終わりましたので、次に遺産分割証明書に基づき不動産(自宅)の相続登記をします。
同時に、異母兄の死亡が記載された除籍謄本を含む相続関係を証する戸籍一式を提出して法定相続情報を取得します。

2 週間ほどで相続登記が完了します。法務局から返却・発行される遺産分割証明書・印鑑証明書・法定相続情報・戸籍一式を、相続証明書ファイルにして整えます。

預貯金の解約、代償金の振り込み

夫側の姉妹に、約束の代償金を支払う必要があります。
今回は遺産として夫の預貯金が500万円ありましたので、代償金はそこから全て支払うことができます。
相続証明書ファイルを銀行に持参・郵送して預貯金を解約します。解約金の入金までに金融機関ごとに1~3週間ほど要します。
すべての解約金が入金され次第、夫の兄弟姉妹3名に法定相続分に相当する代償金を振り込みます。


以上で、相続手続すべてが完了です。
無事、ご相談者様はご希望どおりご自宅に住み続けることができました。

後日談…ご相談者様の遺言公正証書を作成

ご相談者様は、ご自身の相続のときに現在身の回りの世話をしてくれている親族に同じ苦労をさせないために、遺言公正証書を作成しました。

独身の方や子どものいない夫婦にとって、遺言・家族信託などの生前

対策は超重要です

概算費用(遺産額1600万円/2物件)

項目報酬実費
項目報酬実費
事前登記情報
662
戸籍代行取得25通62,50018,750
法定相続情報①10,000
遺言公正証書調査10,000
失踪宣告申立100,000
予納金(官報)
4,298
確定証明書

戸籍届出5,000
法定相続情報②10,000
残高証明書×15,000
遺産分割証明書21,000
相続人回答サポート4名20,000
捺印サポート 4名20,000
相続登記48,00044,000
事後登記情報
662
預金解約代行×139,000
遺言公正証書70,00060,000
小計420,500128,372
消費税42,050
合計請求額¥590,922

まとめ

子供がいないご夫婦にとって、ご自身が亡くなったときに備えた生前対策(遺言・家族信託)は、遺される配偶者・兄弟姉妹に対しての思いやり・気遣いといえます。
遺された配偶者や身の回りをしてくれていた最も近しい兄弟姉妹や甥姪を苦労させないために、遺言公正証書を作成しておくべきでしょう。

今回も、亡くなられたご主人が「全財産を妻に相続させる。妻が先に死亡していたときは○○に相続させる」といった内容の遺言さえ作成していれば、失踪宣告・疎遠な夫の兄弟姉妹への手紙・代償金の支払いのすべてが不要でした。

遺言の大切さを思い知りました

まさかこんなに苦労するなんて
夫が遺言を書いてくれていれば良かったんですね…

当事務所は、

  • 円満相続については効率よい手続
  • 疎遠・複雑な相続については出来る限りの対処療法
  • 資産の凍結を防ぎたい・相続トラブルを予防したいご家族には家族信託・遺言・生前贈与などの生前対策

ご提案・ご提供することにより、皆様の安心・円満な相続と有効な資産の利活用にお役立ちすることを使命としております。

現在又は将来の相続でお悩みのあなたが、いま何をできるかをご提案させて頂きます。ご相談・ご依頼を心よりお待ち申し上げております。