〈2022 年解決事例〉
(※プライバシーへの配慮から編集を施しております)
相談内容…昔の抵当権を抹消したい
お父様が亡くなり、相続手続の相談に長男様が来所されました。
円満に遺産分割協議が成立し、相続登記、預金解約、株式等の移管手続も完了しました。
問題は、昭和初期に設定された抵当権です。
ご相談者様が相続された土地に、現在は存在しない保証責任◯◯信用購買販売利用組合の抵当権が設定されています。
登記の目的 | 受付年月日・受付番号 | 権利者その他の事項 |
抵当権設定 | 昭和5年4月15日 第300号 | 原因 昭和5年4月15日設定 債権額 500円 利息 日歩2銭4厘 債務者 △△市XX丁目X番X号 抵当権者 保証責任◯◯信用購買販売利用組合 |
保証責任○○信用購買販売利用組合は農業会に承継された後、昭和23年8月15日に解散・清算結了し、現在は存在していません。
組合を引き継いだ農業会もその後なくなっています。
本来ならば債務が残っていないため、解散・清算結了する前に土地の抵当権を抹消するべきですが、解散・清算結了をしたのにも関わらず抵当権が残っているということは、清算業務のやり残しがあるということです。
解散・清算結了した法人名義の抵当権を抹消するにはどのようにしたらよいでしょうか?
実際の解決方法
1,解散・清算結了した法人の閉鎖謄本を取得
最初に、抵当権者である保証責任○○信用購買販売利用組合の閉鎖謄本を取り寄せます。
閉鎖謄本を確認し、保証責任○○信用購買販売利用組合が農業会に権利承継された後に清算結了していることを確認します。
農業会の閉鎖謄本には、清算人(清算手続きをする人)として数名の個人の住所氏名が記載されています。
よって、法人の清算人と抵当権抹消登記をすることとなります。

古い法人名義の抵当権抹消登記
=清算業務のやり残しを、所有者の負担で片づける
2,閉鎖謄本に記載された清算人の除籍謄本を取得
次に、清算人の生死を確認するため、清算人の除籍謄本を取り寄せます。
生存している清算人がいれば、その清算人と抵当権抹消登記をします。
昭和23年から70年以上経過しており、当時の清算人は全員死亡していました。
清算人がいないことになります。
3,地方裁判所で法人の清算人を選任
清算人がいないので、地方裁判所に清算人の選任申立をします。
清算人候補者は、書類作成人である、当職とします。

抵当権抹消登記のために就任する「スポット清算人」です
数週間で、当職が清算人に選任されます。
昭和23年に消滅している抵当権を抹消するための形式的な代理人のため、申立書作成人でも差し支えない扱いでした。
(※ただし、2024年の別の解決事例では別の司法書士を清算人候補者とするよう指摘されました)
4,長男様と清算人の共同で、抵当権抹消登記
長男様と清算人である当職の共同により、抵当権抹消登記をします。
以上で、手続完了です。
概算費用(3物件)
項目 | 報酬 | 実費 |
---|---|---|
登記事項証明書 | 1,500 | |
法人閉鎖謄本×2 | 5,000 | 1,200 |
清算人9名除籍謄本×13 | 32,500 | 9,750 |
不在籍不在住証明書×2 | 5,000 | 600 |
清算人選任申立 | 100,000 | 1,000 |
候補者の身分証明書 | 300 | |
候補者の印鑑証明書 | 300 | |
抵当権移転登記 | 10,000 | 1,000 |
抵当権抹消登記 | 10,000 | 3,000 |
清算人選任取消申立 | 10,000 | |
登記事項証明書 | 1,500 | |
小計 | 172,500 | 20,150 |
消費税 | 17,250 | |
合計請求額 | 209,900 |
まとめ
相続登記のご依頼を受けると3%くらいの割合で、古い抵当権、古い仮登記などに遭遇します。
こうした古い登記は、高い確率で抹消できます。
具体的には次の通りです。
- 供託による休眠担保権の抹消登記
- 清算人選任による清算結了法人の権利抹消登記
- 権利者の相続人の協力を得ての抹消登記
- 抹消登記請求訴訟による判決による抹消登記
少々、手間と費用が掛かりますが、次世代に負担を残さないためにも、早めに処理されることをお勧めします。

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